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「学習指導要領」関連資料 (2008/3/6)
  ②理数教育の充実
 
(2) 理数教育の充実
 
○ 「知識基盤社会」の時代においては、科学技術は競争力と生産性向上の源泉となっている。特に、第3期科学技術基本計画(*1)が指摘しているとおり、1990年代半ば以降、ライフサイエンスやナノテクノロジー、情報科学等の分野などを中心に学術研究や科学技術をめぐる世界的な競争が激化した。このような競争を担う人材の育成が各国において国力の基盤として認識され、国際的な人材争奪競争も現実のものとなっている。
 他方、少子・高齢化といった我が国の人口構造の変化のほか、環境問題やエネルギー問題といった地球規模での課題については、次世代へ負の遺産を残さず、人類社会の持続可能な発展のために科学技術に何ができるかが問われている。
 
○ このため、次代を担う科学技術系人材の育成がますます重要な課題になっているとともに、科学技術の成果が社会全体の隅々にまで活用されるようになっている今日、国民一人一人の科学に関する基礎的素養の向上が喫緊の課題となっている。
 学校教育においては、科学技術の土台である理数教育の充実が求められているが、3.で示したとおり、国際的な比較において、我が国の子どもたちは算数・数学や理科について、学習に対する積極性が乏しく、得意だと思う子どもたちが少ないなど学習意欲が必ずしも十分ではない(*2)。また、希望の職業につくために数学や理科で良い成績を取る必要があると思う子どもが国際的に見て少ないことなど職業とのかかわりに関する意識にも大きな課題がある(*3)。
 
○ また、今回の学習指導要領改訂においては、思考力・判断力・表現力等の育成の観点から知識・技能の活用を重視し、各教科等における言語活動の充実を図ることとしている。上記(1)のとおり、論理や思考といった知的活動の基盤という言語の役割に着目した場合、
  比較や分類、関連付けといった考えるための技法、帰納的な考え方や演繹的な考え方などを活用して説明する、
  仮説を立てて観察を行い、その結果を評価し、まとめ表現する、
といった言語活動が重要であり、これらの活動を行う算数・数学や理科の役割は大きい。
 
○ 以上のような観点から、理数教育の充実を行うことが必要であり、具体的には8.で示すとおりであるが、その基本的な考え方は以下のとおりである。
 第一は、算数・数学や理科については、授業時数を増加し、基礎的・基本的な知識・技能の確実な定着のための学年間や学校段階間での反復学習などの繰り返し学習、思考力や表現力等の育成のための観察・実験やレポートの作成、論述、数量や図形に関する知識・技能を実際の場面で活用する活動などを行う時間を十分確保する必要がある。これらを通じ、分かる喜びや学ぶ意義を実感することが算数・数学や理科に対する関心や学習意欲を高めることにつながる(*4)。また、関心や意欲を高める上では、総合的な学習の時間において、例えば、博物館等との連携による体験的な学習や、科学的な知識を活用したものづくりや探究的な活動を行うことも効果的である。
 第二は、同時に、これまで述べてきたとおり、科学技術の進展などの中で、理数教育の国際的な通用性が一層問われてきたことを踏まえて、指導内容についても見直す必要がある。学術研究や科学技術を担う人材の育成と社会的な自立に必要な科学に関する基礎的素養の確立の双方の観点から、算数・数学、理科のそれぞれについて内容の系統性や小・中・高等学校での学習の円滑な接続を踏まえた検討が重要である。具体的には、例えば、理科においては、「エネルギー」、「粒子」、「生命」、「地球」などの科学の基本的な見方や概念を柱として、小・中・高等学校を通じた理科の内容の構造化を行うこととしているが、その際、内容の系統性を確保することや小・中・高等学校での学習の円滑な接続を図る観点から必要な指導内容については充実を図る必要がある。
 第三に、このような理数教育の充実に当たっては、教育内容の充実に加え、それを支える教育条件の整備を図ることが重要である。具体的には、例えば、習熟度別・少人数指導の充実のための教職員定数の改善、外部人材なども活用した小学校高学年における専科教員による教育の充実や理科支援員の配置、観察・実験のための理科教育設備の整備、繰り返し学習や自ら発展的な学習に取り組むことを促す教科書の充実などに留意する必要がある。研修等を通じた理数教育を担う教師の専門性や資質の向上も重要である。また、10.(2)でも示すとおり、入学者選抜試験の理科や数学の出題において子どもたちの思考力・判断力・表現力等を問うような工夫がなされることも理数教育の充実にとって必要である。
 
(*1)科学技術基本法の規定に基づき、政府が定める科学技術の推進に関する基本的な計画。第1期(平成8〜12年)、第2期(平成13〜17年)、第3期(平成18〜22年)と5年ごとに定められている。
 
(*2)文部科学省においては、理数教育の充実のため、例えば、
  小学校の理科の授業を支援するため、研究者や技術者等の外部人材を配置する「理科支援員等配置事業」、
  小・中・高等学校の理科教育等設備の整備のための国庫補助、
  理数教育に重点を置いた高等学校(スーパーサイエンスハイスクール)の指定事業

などの様々な理数教育関係施策を実施している。

(*3)IEA(国際教育到達度評価学会)が実施したTIMSS(国際数学・理科教育動向調査)において、「将来、自分が望む仕事につくために良い成績を取る必要があるかどうか」という質問に対して、「強くそう思う」、「そう思う」と回答した生徒(中学校第2学年)の割合は、数学については国際平均が73%であるのに対して、我が国は47%である。同様に、理科については、国際平均が66%であるのに対して、我が国は39%である。(2003年)
 また、2006年に実施されたOECDのPISA調査では、「科学を必要とする職業に就きたい」と回答した我が国の生徒の割合は23%(OECD参加国の平均は37%)、「大人になったら科学の研究や事業に関する仕事がしたい」は17%(同27%)となっており、それぞれOECD参加国の平均よりも低い。また、30歳時に科学に関連した職に就いていることを期待している生徒の割合はOECD参加国平均が25.2%であるのに対して我が国は7.8%であった。このような結果については、学校教育だけの問題ではなく、研究者や技術者といった科学に関連した職に対する社会全体の処遇の在り方についても検討する必要があるとの指摘がなされている。

 

(*4)2006年に実施されたOECDのPISA調査では、理科(我が国の場合、高等学校の理科)の授業に関する生徒の意識を調査
しており、特に、

  「生徒には自分の考えを発表する機会が与えられている」と回答した我が国の生徒の割合は34%(OECD参加国平均は61%)、
  「授業ではクラス全体でディベートしたり討論したりする」と回答した割合は4%(同36%)、
  「生徒は、実験したことからどんな結論が得られたか考えるよう求められる」と回答した割合は26%(同51%)、
  「先生は理科で習った考え方が、多くの異なる現象に応用できることを教えてくれる」と回答した割合は26%(同59%)、
  「先生は、科学の考えが実生活に密接に関わっていることを解説してくれる」と回答した割合は19%(同46%)、
といった結果となっている。
 
(中央教育審議会答申「7.教育内容に関する主な改善事項」より)
(*)注釈番号は、編集の都合上加工しております。
 
 
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